2023年06月16日 コミュニティ/WG紹介・特別セミナー「WEB3 STUDY MEETING」を開催しました。
1 開催日時
2023年6月9日(金) 15時~17時
2 開催場所
ハイブリッド(オンサイト/ZOOM 選択制)
※オンサイト会場:京都経済センター
3 参加者
51名(オンサイト:9名 オンライン:42名 )
4 主 催
主催:京都ビッグデータ活用プラットフォーム運営協議会
(事務局:一般社団法人京都スマートシティ推進協議会/京都府)
共催:ITコンソーシアム京都/京都高度技術研究所
5 概 要
(1)コミュニティ/WG紹介
京都ビッグデータ活用プラットフォーム事務局 岡山 亮太
① 「オープンデータ利活用推進コミュニティ」について
② 「メタバース・Web3活用コミュニティ」について
③ ソフトバンク株式会社からの提案WGについて
④ 株式会社Local24からの提案WGについて
⑤ 日本生物高分子学会からの提案WGについて
⑥ 京都府デジタル政策推進課からの提案WGについて
⑦ 西日本旅客鉄道株式会社からの提案WGについて
⑧ 株式会社アドインテからの提案WGについて
(2)講演① 「ブロックチェーンで実現される次世代インターネット」
NECソリューションイノベータ 株式会社 第二PFソフトウェア事業部
シニアプロフェッショナル ブロックチェーン技術センター長 深田 彰 氏
・web1、web2からweb3へと一部の情報発信者から、誰もが情報発信者となり、個人が情報を管理するインターネットへ変化する。
・今までは組織において意思決定は基本的にトップダウンであったが、web3におけるDAO(自律分散組織)では全員で意思決定を行う。
・今まではサービスごとにプラットフォーマーが別々にIDを管理していたが、web3ではユーザーが各自で管理し一つのIDで各種サービスを利用可能。
・今まではお金は日本銀行が発行及び流通量の管理を行っていたが、web3ではDAOにおける仮想通貨・トークンといった形で各自の所有量を管理。
・今までのデジタルデータはコピーと本物の区別がつかず、コピーの増殖が容易であったが、ブロックチェーン技術を用いたNFTで本物とコピーの区別が可能に。
・DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは非中央集権型自律組織と呼ばれる組織の一形態のこと。
・一般的な組織である「会社」は「階層型組織」で、権力がトップに集中しており、基本的に組織の方針はトップダウンで決められる。
・DAOでは中央管理者がおらず、対等の立場であるメンバーが自発的な提案、議論、そして投票で意思決定が行われる。
・スマートコントラクトに運営方針を定義することで、可決した方針は自動で実行される。
・ブロックチェーン上の記録は公開されているので、組織運営の透明性が高く、投票権をトークン(ガバナンストークン)として発行することで資金調達が可能。
・DAOのメリット
メンバー全体で納得感のある組織の意思決定と、議論の活発化が見込める
・DAOのデメリット 緊急時の意思決定が遅い、法的な整備がされていない
・階層型組織のメリット 緊急時の意思決定は迅速
・階層型組織のデメリット 意思伝達に齟齬が生まれやすい、上位者からの不当な指示などで下位の人間が理不尽な扱いを受ける恐れがある
・DAOはまず目的を決め、MetaMaskなどのWalletをセットアップし、Aragonなどを利用して構築し、ガバナンストークンなどを発行する。
・DAOの事例として「山古志村DAO」が挙げられる。山古志村は新潟県の中山間地域にある過疎化が進む限界集落で、DAOを形成し「デジタル村民を集めて復興することが目的。
・デジタル住民票をNFTとして販売し、購入した人をデジタル村民とする。村を盛り上げるアイデアを募り、投票で優秀なアイデアを決定し、優秀なアイデアの発案者にはデジタル住民票の売上から報酬が支払われる。
深田氏登壇の様子
(3)講演② 「教育・人材領域でのWeb3/分散型アイデンティティ(DID/VC)の活用事例」
株式会社VESS Labs Founder 藤森 侃太郎 氏
・自己主権型アイデンティティとは、管理主体が介在することなく、個人が自分自身のアイデンティティをコントロールできるようにすることを目指す考え方。
・分散型アイデンティティとはデジタルアイデンティティの「特定のIdPへの依存度を下げることを強調する技術フレームワークのことで、ブロックチェーン技術が活用できる。DID(分散型識別子)やVC(検証可能な資格情報)など。
・現在の履歴書を利用する採用の現場では、履歴書の情報不足や経歴詐称などの採用側の課題、学歴・職歴以外の実績が記録に残らず、履歴書と面接しかアピールの場がないなどの被採用者の課題などが挙げられる。
・この根本原因としては経歴書が自己申告型であること、IDに紐づくデータが各サービスに分散してしまうことが考えられる。
・これをDID/VCを用いることで、デジタル証明書の形でビジネスイベントへの参加証明や、インターンシップの修了証などを残す詐称困難なデジタル経歴書を作成することができる。
藤森氏登壇の様子
(4)講演③ 「デジタル個人認証とDID/VCを活用したアイデンティティマーケティングの活用事例」
株式会社Qwi CEO 小川 涼 氏
・映画や旅行(長距離移動)、買い物の一部などでは窓口で学生証を提示することで学生割引が適用されることがある。
・株式会社Qwiの提供する「Qwi App」では上記の証明とDID/VCを結び付け、デジタルアイデンティティを保持することができ、登録情報・趣味嗜好などがデバイス上に自分だけのVCとして保持することができる。また開示した情報をもとに、最適化されたサービスの情報を受け取ることができる。
小川氏登壇の様子
(5)パネルディスカッション
テーマ⓪:「『ウェブスリー』の表記をどのように書いているか、それはなぜか」
深田:自分たちは小文字で『web3』。なぜなら『Web3.0』と『web3』は厳密には異なり、Webの進化の過程における『3.0』と、3番目に出てきた『3(スリー)』があり、自分たちは3番目に出てきた『3(スリー)』を採用している
藤森:あまり意識していないが、自分たちがやっている事業では『web3』と言われていることが多いので、『web3』を使用している。大文字か小文字の区別はあまり考えていない。
小川:自分たちは小文字で『web3』を使用している。『Web3.0』というと6Gとかドローンとかそこらへんまでかかってくる領域だとイメージしている。
テーマ①「web3技術は、世界をどのように変えるか」
深田:自分の講演でも話したが、変えるのではなく、皆さんがマインドを変えないといけない。ほとんどの人がデータを中央に集められている現状に心地よさを覚えており、データが管理されていることに違和感を覚えている人がほとんどいない。web3を使っていくためにも、分散されていく、中央に縛られないというマインドが必要だと考えている。
藤森:マインドを変えるというのはとても大事だと思う。データの持ち方が変わるといろんなことが変わっていくと思う。例えばメタバースの領域でも、AというメタバースからBというメタバースに同じデータは持っていけない。他のサービスでもそうで、特定のゲームのアセットやスキルを持っていくことはできない。データの在り方が変わっていくとそういったことが可能になり、メタバース等も発展していく。
小川:ブロックチェーンやweb3が作り出す未来はなにかしらのオーナーシップをユーザーに返す。例えばNFTで言えば、デジタル上の作品に対する所有権が確立されたもの。私たちが取り組もうとするDID、VC、SSIなどは自分のIDにオーナーシップを持つ。例えばビットコインなどの金融商品だと、どこかの銀行や国の紙幣ではなく、自分が所有していると証明できる。DID/VC、NFTなどに共通しているのは、所有権がどこにあるのかが変わってくると思う。
テーマ②「web3×様々な分野(子育て、教育、医療、福祉、観光etc…)」
小川:先ほどのテーマとつながっているが、このインターネット社会では、私たちのIDやアクティビティなどの情報は一番侵されていて、その中で全員に対してDIDやSSIを勧めるのはハードルが高い。教育や福祉、HR、権利の発行などとは馴染みやすいとは思うが、インターネット消費活動におけるお金の使い方などが真に分散化されると経済圏が活性化していくと思う。
藤森:分散型アイデンティティという観点で言うと、医療系の分野は相性がいいと思う。ヘルスケアのデータはセンシティブなデータの最たるもので、プライバシーが守られていないといけないもの。管理のリスクやコストを下げて使いやすくなるという点でも相性がいい。
深田:環境系に注目している。例えばカーボンクレジットを発行するには自分がCO2の削減に貢献しているという証明が必要。証明したものを検証・監査する機関の工数が削減される。これは環境系以外の何らかの審査が必要なものでも活用できる。先ほど藤森氏が医療の話をしたが、別の医者にかかるたびに同じ検査をされるのはおかしいと思っている。自分が買った診療結果はVCとして自分で保持すれば、セカンドオピニオンの際に同じ検査をする必要はないはず。このように世の中は変わっていくと思う。
質問への回答
質問①「(→深田)DAOというものは中央集権的な管理者不在ということですが、投票権を多く持った方(トークンを多く持った方)にコントロールされてしまうのではないでしょうか?株式会社のようになりませんか?」
深田:簡単にそうなるときもある。トークンを売り、占有したい人が多く買えばそのようになりえる。ただガードをかけることはできるので、そこは最初にガバナンストークンの上限を決めるなどルールを制定するしかない。無制限に発行すれば誰かが占有することは起こりうる。株式会社でも一緒。
質問②「(→藤森)発行されたVCは一部のものでは証明書として利用ができても、履歴書、経歴書を使うプラットフォーム全体が変わらないと使えないままなのではないかと思いましたが、その懸念はありませんか」
藤森:まさにその通りで、紙の履歴書がオンラインに変わっていったのと同様、多少時間はかかると思っている。単純にDID/VCを使って経歴書ができたと形で終わるのではなく、採用者・被採用者に明確なメリットを提示することが大事だと思っている。オーストラリアの大学で、学生証にDID/VCを使用した例があって、それまで紙の学生証だったところから管理も楽になり、コストも下がったというメリットが見られた。そういう例を示していきたい。
質問③「(→小川)なぜ学生さんに絞ったアプリにされたのですか。」
小川:この日本社会において、認証という形が最も求められるのが学生だと思っているから。日本に『学生』という認証を行う機関は一つもない。その中にDID/VCという形を用いて学生たちにアプローチしている。
パネルディスカッションの様子
(6)「メタバース/Web3研究会」告知
京都高度技術研究所 池上 周作 氏
▢メタバース/Web3研究会について
・これからメタバースやWeb3に飛び込みたいと考える企業に参加いただき、企業間の関係構築や人材育成によりエコシステムを形成し、京都の地域産業の発展・信仰を図ることを目指す。
・主な活動内容
① 研究活動
テーマに沿ってワーキンググループを編成し、研究活動を実施する。
② セミナー
メタバースの動向や事例など、外部講師によるセミナーを実施する。
③ 事業化推進
研究成果の事業化・サービス化を見据えた活動を推進する。
・研究会の目標
活動期間はR5~R7の3ヵ年。メタバース/Web3に関する技術要素をWG毎に調査し、R8度までを目標に研究会からWeb3・メタバース分野の新規サービスの創出を目指す。
・参加メリット
① 事業化できる企画は自社で事業化可能
② 研究に使用する機器の体験
③ 定期的なセミナーの開催
④ 他社との交流
池上氏登壇の様子