2023年03月27日 産官学医連携シンポジウム「未知なる新興感染症との共存社会を考える」を開催しました。
1 開催日時
2023年3月16日(火) 14時~16時
2 開催方法
ハイブリッド開催
※現地会場:京都経済センター3-F
3 参加者
参加者:112名(現地参加者26名/オンライン参加者86名)
4 主 催
主催:(事務局:一般社団法人京都スマートシティ推進協議会/京都府文化学術研究都市推進課)
5 概 要
(1)基調講演
「新型コロナウイルス感染症 行動変容への提案」
京都府立医科大学 学長 竹中 洋 氏
・新型コロナウイルスも半分程ベールが剥がれたが、未知の部分が残っている。
・2023年2月に政府から発出された医療ガイドラインでは、「薬剤を適切に使用していくことが重要」と示されており、ワクチンや行動変容ではなく、薬剤を早期に投与すれば効果的という時代に移行している。
・重症化する方のほとんどが医療施設の入院・外来患者であり、超高齢化が進んでいる現代社会では依然としてリスクは大きい。
・新型コロナウイルス感染症の腹部症状は5-20%と頻度は高いが、コロナ重症度に相関はない。便中のウイルスは比較的長時間持続するが、感染性を有するウイルスを検出することは稀である。
・諸外国でも下水SARS-CoV-2サーベイランスは行われているが、調査目的や何を知りたいかが明確でなければ、ビッグデータ化は難しい。
・医療提供者側は、病院が崩壊しないよう、感染症がコントロールされているかどうかに注目している。
・行動変容の提案の考え方
①安全性の担保・・・測定方法の基準化、標準化、安定した供給
②コスト負担・・・受益者負担か、社会で許容するか
③恒常的・・・時間、必要度、空間
・行動変容から学ぶもの
①社会的なRisk Management Model(COVID-19+局地的豪雨)
②モデル設定の重要性(新興感染症の脅威)
③情報ネットワークの構築(対面交流の代理システム)
④必要性についての共有意識と成熟(初等教育からの必修化)
⑤補助金・助成金の流れ(国の存亡に関わる投資対象)
(2)成果発表
①Disease X感染症対策WG「下水サーベイランス実証と感染予測モデル」
(株)AdvanSentinel 取締役副社長 今井 雅之 氏
京都府政策企画部デジタル政策推進課 主幹 川口 浩平 氏
- 令和4年度活動:内閣官房実証事業について
・新型コロナウイルス感染症の感染予測モデルを構築し、2~4週間程度先の感染トレンドを予測することに挑戦した。
・感染予測結果を行政の政策判断に活かすためには、2~4週間後の新規陽性者数の予測が必要であると実証当初に目標設定したが、下水サーベイランス単体では1週間程度先の新規陽性者数のトレンド把握が限界のため、他データと掛け合わせて長期の予測モデルを構築する必要があり、掛け合わせるデータと数理モデルの検討を行った。
・結果として、下水の定量データ、人流データの分析により、各データ間の関係性を明らかにして予測モデルを構築することができ、良好な予測結果が得られた。
・現在、実証事業の事業管理者側で全国における実証データを取りまとめており、実証結果の公表について検討されている。 - 今後の展望について
・5類移行後の感染動態の把握のため、臨床PCRによる定点観測を補完する技術として、下水サーベイランスを活用し、感染状況の正確・効率的な把握につなげていきたい。
・本WGとしては、コロナから得られた教訓を整理し、平時からのモニタリングや感染立ち上がりの検出等、次のDisease Xに備えることが重要と考えている。
②SCP/スマート・ウォーク・セーフティ京都WG
「感染・経済同時対策とスマート化ツール~次に来る新興感染症に向けて」
日本生物高分子学会 副会長 則内 健司 氏
(一社)防災減災技術開発機構 代表理事 勝田 芳史 氏
・従来のネガティブな感染症対策の経験を活かし、新たな感染症対策として、感染流行期であっても社会経済活動を維持するバブル方式(隔離された陰性者が集まる空間を作り上げる)を身の回りで構築することを目指す。
・検査の日常化と証明利用をスマートフォンを利用して行い、安心安全な環境を構築することを目的に、和食料亭、商店街店舗等でフィールド実証実験を実施した。
・実証実験では、参加者に抗原検査を実施し、ゾーニングすることで安全安心な環境を構築し、必要となるアプリケーションについて討論した。
・次期スマート化ツール「次期感染症安心相互確認(Next_ASK)システム」(=スモールバブルのホストとゲストのマッチングシステム)を構築した。
・本ツールを個人イベント、企業や組織、行政も含めた幅広い活動空間で利用できるツールとして、感染症に対する年の強靱化に繋げたい。
(3)特別講演
SHIONOGIの感染症に対する取り組み:感染症領域でのワンストップ
ヘルスケアサービスを目指して」
塩野義製薬(株)執行役員・ヘルスケア戦略本部長 三春 洋介 氏
・COVID-19のトータルケアに向けたSHIONOGIの取組として、予防薬・診断薬・治療薬のセットが必要であり、ソリューション提供に向け積極的にリソース投入する。
・純国産ワクチンは、安全保障の観点からも極めて重要であり、本格参入から約3年でのワクチン実用化を目指す。
・数多くの感染症薬を創出してきた強み、経験を活かし、短期間でCOVID-19に対する有望な経口治療薬候補品を創製した。
・パンデミック下の医薬品開発では、感染縮小期および拡大期どちらにおいても被験者の確保が困難であり、治験体制構築が課題となる。
・感染症対策は、公衆衛生上の大きな課題であり、また国家の安全保障に関わる重要課題であるため、今後起こりうるパンデミックを見据えた体制整備が必要である。
(4)パネルディスカッション
「未知なる新興感染症との共存社会を考える」
パネリスト:講演者及び成果発表者
今井:下水サーベイランスの社会実装のためには、医療関係者や行政、国民に理解いただけるような工夫がより一層必要と感じる。また、下水を他のソリューションとどう結びつけるかという全体像を描くことも重要である。
則内:空中浮遊ウイルスに関して共同研究を試みたが、道半ば。スモールバブルの構築には、ホスト側の感染症対策のリテラシーが必要であり、それをアプリで補うことをテーマとして考える。
三春:パンデミック発生時の対処としてはソリューションの組み合わせが大事だが、組み合わせ方は感染ステージの時間軸を考慮する必要がある。
※共存社会のあり方とは
三春:病原体が地球上のヒトや動物を介してどう増減していくのか、大きな活動を捉まえて人類としてどう共存していくのかを考える必要がある。
今井:森林減少によるヒトと動物の距離感の変化やグローバル化による人流増加により、未知の新興感染症はこれからも起こりうると捉え、事前の体制を整えておくことが共存社会のあり方と考える。
竹中:コロナ禍の3年で得られた経験は、同様のエアロゾル感染に活かされる。風化させずに知識を残し、総合知として枠組みをつくることが非常に重要である。
6 イベントの様子
会場風景
パネルディスカッションの様子