メタバース・Web3活用コミュニティオープンイベント「Metaverse&Web3 Law Seminar」を開催しました。

2023年08月25日 メタバース・Web3活用コミュニティオープンイベント「Metaverse&Web3 Law Seminar」を開催しました。

1 開催日時

   2023年8月22日(火) 14時~16時

2 開催場所  

   ハイブリッド(オンサイト/ZOOM 選択制)
   ※オンサイト会場:京都経済センター

3 参加者 

   37名(オンサイト:10名 オンライン:27名 )

4 主 催  

   主催:メタバース・Web3活用コミュニティ/京都ビッグデータ活用プラットフォーム運営協議会
      (事務局:一般社団法人京都スマートシティ推進協議会/京都府
   共催:ITコンソーシアム京都

5 概 要

(1)挨 拶
  京都府総合政策環境部 吉岡 信吾 企画参事

(2)講演 「メタバース・Web3の法的課題と実務上の留意点」

① NFTについて
▢著作権法との関係
 ・Mint(発行)に関しては権利者の許諾が必要
 ・Transfer(移転)に関しては権利者の許諾が不要
 ・従来のインターネットに比べてブロックチェーン上の権利侵害は、発信者情報開示請求ができないので、本人特定が難しい。
 ・ブロックチェーンには「透明性」と「匿名性」という一見矛盾する特徴がある。
 ・トークンがどういった経路を辿ったか把握できるという「透明性」、今現在誰がそのトークンを管理しているか分からないという「匿名性」と分けられる。
 ・従来のサーバーで一括管理されているコンテンツであればサーバー管理者に削除要請を出せば済むが、IPFS(分散型ストレージ)で管理されている場合、削除請求や本人特定が難しい。
 ・マーケットプレイス側のルールメイキングが重要

② メタバースについて
▢デジタルツインと著作権
・デジタルツインにおいて問題となりうる「建築の著作物」と「美術の著作物」がある。
・建築の著作物は著作権法第46条に記載されている例外を除き、基本的にはデジタル上で複製しても問題ない。
・美術の著作物は恒常的に屋外に設置されている原作物に関しては不当な使用法を除いて複製しても問題ない。

▢メタバース上での迷惑行為
・他人の容貌と瓜二つのアバターを使用してなりすました場合は肖像権侵害、なりすまして社会的に非難される行為をした場合は名誉棄損に当たる。
・肖像権侵害は社会通念上受忍の限度を超えるか否かにより判断されることが多い。
・誹謗中傷には名誉棄損と侮辱が挙げられる。
・名誉棄損と侮辱には同定可能性が必要であり、アバターがその活動を通じて社会的評価の対象となり得ているか、アバターが中の人の人格を反映しているかが一つの基準になる。
・メタバース上での「つきまとい」にはストーカー規制法による規制の対象になる可能性がある。

③ DAOについて
▢DAOの法的性質
・DAOの法的性質は決まっていない。
・既存の法人・非法人の組織形態を採用しなければならない。
・法人格を持たせる場合と持たせない場合がある。
・法人格を持たせた場合、選択した法人形態に従った機関を持ち、機関決定の形式を整える必要がある。
・これはDAOの実態からは離れてしまっている。
・お飾りとして取締役(会)や理事(会)を置いて、DAOの意思決定に従う契約にすることで一応の実現は可能と思われる。
・その場合、取締役・理事としての責任を負うリスクが発生し、誰がそれを負うのかが問題になる。
・一般社団法人を選択した場合は社員に対する配当を行えないので、インセンティブの配当が行えない。
・法人格を持ってしまうと二重課税が避けられない。
・法人格を持たない場合、「民法上の組合」に関しては、個々の構成員が無限責任を負うため避けた方が望ましい。
・法人格なしの中で、「有限責任事業組合」は有限責任・二重課税回避・配当可能であり、これまでのデメリットを避けることができるが、組合員の名義変更の登記が必要であり、メンバーの入れ替わりが激しいDAOにはなじまない可能性もある。
・「権利能力なき社団」がDAOの実態に最も近いと思われる。
・「権利能力なき社団」とは、社団としての実質を備えていながら法人として登記していないため法人格を有しない社団のこと。
・権利能力なき社団として整理しても、法的に権利能力なき社団として認められるわけではなく、訴訟などを受けた場合に裁判で民法上の組合とみなされ、無限責任を負う可能性がある。
▢DAOの資産・権利の帰属
・DAOの資産・権利の帰属は選択した法的組織形態に準じて決定される。
・法人格ありの場合はその法人に帰属することが多く、法人格なしの場合は、権利能力なき社団では各人に持ち分なし、組合では各人に制限付き持ち分ありとなるが、契約で別段の定めを置くことはできる。
▢DAOの将来
・自民党Web3プロジェクトチームの公表するWeb3ホワイトペーパーではDAOの法制化を目指す動きがあるため、今後は上記の法人形態より適したものができるかもしれない。

松岡弁護士ご講演の様子

(3) パネルディスカッション
▢登壇者
TMI 総合法律事務所 弁護士 松岡 亮 氏

京都府警察本部生活安全部サイバーセンターサイバー企画課 課長補佐 吉岡 竜之介 氏

一般社団法人プレプラ代表理事/株式会社ゆずプラス代表取締役
内閣府地方創生 SDGs 官民連携プラットフォーム メタバース副分科会長 水瀬 ゆず 氏

題①「犯人の特定・追跡が難しいブロックチェーン技術。どう対応するか?」

吉岡氏:犯人の特定というのはブロックチェーンに限らずサイバー犯罪追跡の上では重要な事項。現在海外と手を組んで共同オペレーションをやっていかないと追い付かない。通信技術の匿名性はどんどん進化しており、今後警察だけだはなく企業と手を組んでいかないといけないと思っている。
水瀬氏:メタバースからの視点になるが、メタバースはより密接な関係を築ける場になっている。例えば新興宗教や詐欺などの温床になるという危険性を孕んでいる。過去の事例を踏まえながら今後のルールを作っていかないといけない。
松岡氏:日々実感しているのは、法律の観点から解決できる事柄もあるが、技術系や行政と協力していかないと難しい点は多い。吉岡氏も言っていたが、色んな専門家と連携することが肝要。

題②「現行の法解釈で対応できない問題。今後の展望・可能性は?」
松岡氏:現状の法の解釈だと解決できない問題があるというのは本日の講演でも話したが、DAOの組織形態など顕著で、法が現実に追い付いていない。しかし、自民党のホワイトペーパーなどでWeb3等に関して取り上げられている通り、立法が動いていないわけではない。ロビー活動をしていくことも大事。
吉岡氏:サイバーストーカーの相談を受けることが多い。サイバー空間で付きまといが起きた場合にどう対応するかを考えていく必要がある。
水瀬氏:最近はアバター改変も多く、ボイスチェンジャーで完全に他人に成りすますことができる。自身のアバターを使用され、声も真似られた場合、肖像権等の問題でどう扱うか、現状では判断がつか
ない。今後はそういった観点での法整備や法解釈の幅を広げていく必要があると思う。

題③「メタバース等に参加していくデジタルネイティブ世代。どうやって未成年を守るか?」
水瀬氏:メタバース世界の中では特有の文化が根付いており、法整備ではない、その中の人たちの暗黙のルールがあり、治安が守られている側面はある。しかし、年齢制限などの外的な規制は必要であり、メタバース内の文化と掛け合わせながら安心安全な世界を創造していく必要がある。メタバース世界では若者や障害を抱えている社会的弱者の方が多く、そういった側面も踏まえながら発展させていけるようにこれからも考えていきたい。
松岡氏:法的には未成年者取消権などがあり、未成年者保護にはなっていると思うが、民法改正で成人年齢引き下げもあり、危惧する部分もある。個人的にはインターネットの世界には実際に触れてみて危険を実感しないとリテラシーが成長しない部分があると思っている。規制だけがいいわけではない。アバター姿では未成年かどうか分からず周囲も守りにくく、メタバース特有の問題として挙げられると思う。
吉岡氏:結論から言うと「安全はすべてに優先する」という警察でよく使われる言葉がある。安全じゃないと安心して使用できず、ユーザーも増えない。実際にトラブルに遭ったときにどう対処するかを学んでいくが、その時にいかに賢くインターネットを扱うかを相談できる相手になれること、安全に楽しめるサービスを提供することが大人の役目。そういったものを官民連携で創り出していきたい。

パネルディスカッションのご様子
(左から松岡弁護士、水瀬ゆず氏、吉岡竜之介氏)

質疑応答
質問「メタバースの中ではAIを利用することも増えていくと思うが、AIが人を傷付けたり肖像権等を侵害した場合、人格がどこにあるのかが問題だと思う。作った人が悪いのか、利用した人が悪いのか、現状だとどういった扱いになっているのか、総合的に教えてほしい。」

松岡氏:AIが図らずも第三者の権利を侵害してしまった場合どういった法的な扱いになるのかは基本的には不法行為法に則る。不法行為法の原則として不法行為責任を被るのは「故意過失があるもの」に限られる。AIの開発者、使用者どっちにおいても過失がない場合は不法行為責任は負わない。ただし、第三者の権利を侵害するAIの表現があると知った後に改善しない場合には不法行為責任を負う場合がある。

質問「デジタルツインの話で著作権は譲歩されるという話があったが、街中には著作物だけではなく商標物もあると思うが、こういったものはどのように扱うのか」

松岡氏:単純にデジタルツインで再現しているだけでは商標権侵害には当たらない。なぜかというと商標権というのは出所を証明したり自他識別の機能を保障する権利なので、使用の中でも商標としての使用だけが侵害として扱われる。

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